2007年11月02日

村は死によって包囲されている

皆さん、読書の秋ですね。
『屍鬼』を読み始めたら止まらなくて寝不足なAT&Tです。

せっかくなので寝不足した成果を書き連ねますね(ぉ

『屍鬼』は小野不由美著のホラー小説で、十二国記シリーズと並んで著者の代表作。
どんな内容かというと、「こちら側」に居場所を求めた「あちら側」の存在が引き起こした
惨劇を描く、静かな山村を舞台とした群像劇です。

惨劇の舞台となるのは外場(そとば)村。山深いこの山村は、元は寺領だったものを、樅
の生い茂る山に目を付けた山師達が借り受けて切り開いたのが始まりとされています。
村では行政と共存する形で村独自の社会システム(村を取り仕切る「三役」、地域の葬儀
の仕切りを行う「弔組」など)が未だ息づいており、古来からの村社会が色濃く残る土地柄
です。このため余所者は排斥傾向にあり、人間関係も村内で完結することがほとんど。
一言で言ってしまえば、「閉じている」村。それ故に悲劇は起こってしまいます。

作品序盤では、まず舞台となる村の情景や村民達の日常が、伏線を張りつつ緻密な
筆致で描かれます。
他愛ない噂話に興じる老人、都会から越してきた一家、村の外に憧れる少女、変わり者の
医師と病院のスタッフ、多数の村人を檀家として抱え尊崇を受ける寺、小説家の僧侶。
いつまでも住人が越してこない、村を睥睨する洋館。

そして起こる小さな事件。事件とは何も関係なさそうに見える村人の突然死。それに続く、
地理的に孤立した集落に住む三人の老人達の不可解で無惨な集団死。
無責任に、しかし深刻ぶってその話題を方々で口にする、平和な日常に倦んだ村民達。
その裏で何かが壊れ、静かに、そして徐々に村は狂い始めていく。
村の異常に逸早く気付き、真相を追って事態を収めようと水面下で立ち回る人々。
だが、彼らの手は真相を掴むことなく、嘲笑うかのように事態は悪化の一途を辿っていく。
やがて誰の目にも明らかになっていく村の異常。しかし村民達はそれと気付きながらも、
常識を言い訳にそうでないと必死に思い込もうとする。

焦燥に駆られながらも真相を追う者が辿り着いた、全てを繋ぐ「屍鬼」というキーワード。
屍鬼に魅入られた村の行く末や如何に───

というのがあらすじ。
最初はかったるいほどにゆったりと話が進むんですよ。何しろ登場人物が150名を超える
ので、登場人物を出すだけでも相当のページ数を費やすうえ、その後も真綿で首を絞め
るようなジリジリとした展開が続きます。
慣れてないとこのじれったい展開にイラっとくるかもしれません。ただ、これはこの著者の
特徴であり、私も最初十二国記を読んだときは序盤でイラっとしたのを覚えてます。
が、物語がある境を超えると、坂を転げ落ちるように話が急加速していくのもまた特徴で、
溜めに溜めまくって一気に解放する展開が著者の真骨頂。当作に至っては、坂を転げ
落ちた上に崖からダイヴ!というところまで突き進みます。

人と人ならざるものの軋轢を描いておきながら、勧善懲悪という話ではないのもポイント。
屍鬼も怖ぇけど、人も怖ぇ

個人的に、ここ一年で最もハマった小説かもしれません。
ホラー小説って時点で人を選びそうですが、マジオヌヌメ

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この記事へのコメント
読むのめんどくさいから、アニメ化きぼー。
ページめくるの手が疲れるんだもん。
Posted by あや at 2007年11月03日 14:46
アニメ版の最終回は nice boat. ですがよろしいでしょうか?

ジャンプスクエアの来月号から漫画版が連載予定だってさ。
Posted by AT&T at 2007年11月05日 19:37